新素材トリポーラス™️とは

本記事ではソニーが開発した新素材トリポーラス™️の概要と、応用製品を商品化している各社の戦略について概説します。

1. トリポーラス™️とは

以下はソニーのニュースリリースを要約したものです。

植物由来多孔質炭素材料「Triporous™(トリポーラス™)」のライセンスを2019年1月より開始

背景

ソニーはリチウムイオン二次電池の研究開発の過程で特殊な構造を持った炭素材料トリポーラスを発明し特許を取得してきた。これは既存の活性炭より吸着量が高く吸着速度が速い特徴があり、化粧品、薬剤、衣類、布製品などへの応用が期待されているためライセンスを開始することにした。

トリポーラスの特徴

・トリポーラスとは、籾殻など余剰バイオマスを原料とした多孔質炭素材料。従来活性炭の2nm以下の孔に加えて2-50nmの孔と1um程度の孔が多数複合して存在している。

・上記特徴により従来技術では吸着しにくかった分子量の大きな物質、例えば水質汚染の原因になる有機分子や酵素などの小さなタンパク質、ウイルスなど、を容易に吸着でき、有機塩化物や農薬などの低分子化合物は高速吸着が可能になった。

・応用分野としては、汚染物質の除去、防臭・消臭・除菌効果が望め、環境浄化フィルター、トイレタリー、化粧品、薬剤、衣類・布製品等に付加価値をつけることができる。

・加えて、余剰バイオマスを活用しているので循環型社会に貢献できるとのこと。

※余剰バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源のこと。


2. ソニーの戦略

以下は日経トレンディ6月号の広告記事を参考にしています。

「トリポーラス™️」はソニーが開発した新素材の名前

・ソニーが電池の材料を研究する過程で生まれたもの
・籾殻を用いた炭素材料で、3つの異なる大きさの穴からなる多孔質構造により、高速吸着性能を持つ
・水・空気の清浄化、化粧品、薬品、新型電池などへの応用が考えられる
・化粧品分野ではロート製薬と組むことにした

※ソニーの関係者として田畑誠一郎氏と山ノ井俊氏が紹介されています。

3. ボディウォッシュに採用したロート製薬

・元々男性用ボディウォッシュ「デ・オウ」を商品化していた
・加齢臭対策に力を入れようとしていたところ、ソニーの素材に着目した
・ソニー・ロート製薬の共同開発で新商品が世に出ることになった

※ロート製薬の関係者として墨田康男氏が紹介されています。

商品名は「デ・オウ」薬用クレンジングウォッシュ

と言うわけで、トリポーラス™️を吸着炭(吸着材・薬用炭)として配合した新商品はニオイの元となる汗や皮脂、汚れを吸着し、洗い流してくれます。

4. 衣類に採用したミツヤコーポレーション

繊維・アパレル分野では、消臭など機能素材の開発に力を入れているミツヤコーポレーションと組んだ。同社はトリポーラスの粉末をわたの段階で加工して紡績し、「トリポーラスファイバー」として打ち出している。

スポーツ用品・ファッション総合見本市ISPO(ミュンヘン)にて、綿やポリエステルと複合した丸編みを使った、インナーウェアを中心に手袋、靴下、帽子などを展示した。

5. まとめ

トリポーラスには既存活性炭よりも高性能な汚染物質の除去、防臭・消臭・除菌効果等が望めるため、今後も採用、商品化する会社が増えていくものと思われる。

ここまで

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